可愛い可愛い弟のたいちゃん

 

実家に寄ったある日の深夜の話。

 

「実はもう4回目になる、母さんとの大学辞めたいバトルをしてるんだけどさ…」

 

大学を辞めたい弟は現在大学2年生。

 

1年生の夏から辞めたい気持ちを抱えていたらしい。それが今年の夏前に限界を迎えそうになった。夏休みのグアム旅行を楽しみになんとかテストを乗り越えた。

 

夏休みで何かが変わるかもしれないという小さな期待を持って、あっという間に1ヶ月半の夏休みを終えてしまった。

 

後期を通い始めて、やはり自分には大学が合わないと思ったようだ。頑張って通い続けても卒業できる気がしないらしい。卒業しても、どうせどこかの会社に入るなら大学を卒業する意味がわからないと言っていた。

 

姉の私も、2年の後期に大学を辞めている。その後はちゃらんぽらんな生活をしていた。だからそんな私を反面教師として「姉のようにはならない」くらいに思って頑張ってるのかなあと想像していたが、まさかの私と同じ道を辿る可能性が高まっていて全力で阻止したい気持ちでいる。

 

休学して考える時間を確保すればいいと思ったが、休学の申請期間を過ぎてしまったらしい。本人ももっと早くちゃんと考えればよかったと後悔していた。休学をしたかったと。ここで通うことを辞めてしまったら後期の授業料70万をドブに捨てることになる。

 

「大学を辞めて何をするの?何がしたいの?」と聞いた。「学ぶなら経済学。それか高校生の時からなんとなく考えていた漁師。グアム行ってちょっと考え方変わって、海外に住みたいとも思ったから移住もしたい。」

 

ワーキングホリデーを勧めてみたら「へえ〜こんなのあるんだ〜俺にピッタリじゃん!!」と喜んでいた。

 

色々と考えてはいるみたいだけど、どれもこれも隙ばかりで考えが浅すぎると姉は思った。

 

次の日の授業に行かないと、来年のキャンパス移動ができなくなる可能性がある。だけど行きたくない。と言っていた。

 

「とりあえず今できることを精一杯やってみな。ママに反対されるのなんて当たり前なんだし、夏休みの時間を有効に使えなかったのは自分なんだから、明日の授業はちゃんと行って、できる範囲で頑張りましたそれでも無理でしたっていうのが筋でしょ?○○(弟)が大学辞めたいって悩んで、鬱状態になってるのもわかるし、精神病んでまで通って欲しいとは思わない。ただ私は大学を辞めて後悔したし、大卒が欲しいと何度も思ったから、大学を辞めるなら大学辞めなきゃよかったって後悔しない人生を送れるようにしなさい」と諭した。

 

結果翌日弟は大学に行かなかった。

 

自分で決めたことだし、弟ももう二十歳になったんだから自由にすればいいと思う。

 

けれど、弟が大学を辞めたら、やはり両親も私も言い表せないような気持ちになるはず。何故なら期待をしていたから。弟に期待がかかっているのは、上の私が逃げたからっていう理由も勿論ある。そこは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

とにかく、弟には順風満帆に生きて欲しかったんだ私は。

 

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そんな弟のことを「たいちゃん」と昔は呼んでいた。

 

たいちゃん

 

たいちゃん!!

 

たいちゃん!!!!!

 

今はもう「たい○」と呼び捨てでしか呼ばない。「たいちゃん」という響きが懐かしい。

 

いとこのお姉ちゃんの第二子が「たい*」という名前で、このたい*くんも「たいちゃん」と呼ばれるようになった。

 

私も「たいちゃん」と呼んでいる。

 

生まれて3ヶ月。

 

たいちゃん、たいちゃん

可愛いね〜

あ、笑った

嬉しいの?楽しいの?

可愛いね〜たいちゃんは可愛いね

 

私は甥っ子のたいちゃんを、甥っ子としてではなく、昔の弟に重ね合わせていることに気づいた。

 

たいちゃん、死なないでね。

 

私たちは遺産で揉めたりしないで、ずっとずっと仲良くしようね。おばさんとおじさんになっても仲良くしてね。たいちゃん。